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昨今のDXについて思うこと

COLUMN2021.06.21

ここ数年DX(デジタルトランスフォーメーション)が産業界だけでなく巷でも話題の言葉となっていますが、日本の状況はいかなるものでしょうか?

経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」*1)で、「老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムがDXを本格的に推進する際の障壁となることに対して警鐘を鳴らすとともに、2025年の完了を目指して計画的にDXを進めるよう促す」としていましたが、2020年末に公開した「DXレポート2」*2)では、DX推進状況についてIPA(独立行政法人情報処理推進機構)がDX推進指標の自己診断状況を収集し、「実に全体の9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況であることが明らかに」との分析結果を示しています。

このコロナ禍で感染防止対策、経済対策のために政府が導入したシステムがことごとく使いものにならない状態となり、ITシステムに弱い国であることが露呈しました。産業界においても先の経産省のDXレポートにあるように、デジタル化前提のDX推進が捗々しい状況ではないことを示しています。

そもそも、DXは何をすることで何をしなければならないのでしょうか?
DXのDはデジタル化を進めることですが、Xのトランスフォーメーションは何を進めることなのでしょうか。経済産業省が公表した定義(2018年)では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としています。

では、個々の企業にとっては何を考え、行動しなければならないのでしょうか?
明日のわが社がどの様なビジネスを展開させるのか、そのビジョンを経営者自ら考え指し示すことが第一義的だと思います。そして、それを実現するために今のデジタル技術(ツール)をどのように活用するかを社内のIT部門、社外のITベンダーとともに考え適用・利用していくことにあると思います。

別の例えをすると、これから就職する若者に対してあなたはどのようなアドバイスをしますか。『あなた(若者)が興味あること、やりたいことが何かを考えるこが大切で、それが可能となるところを探し求めなさい』と言うのではありませんか?そのうえで関連する業界の就職情報をリサーチするように勧めるのでは。

DXとは、明日のわが社をどのように成長させるのか、その企業の経営理念に基づき新たなビジネスの仕組みを構築することにあり、一方で自社のITシステム環境の問題、課題をシステム部門だけの問題でなくDXを推進するための経営課題として取り組むことだと考えてみては如何でしょうか。

<参考文献>
*1) 経済産業省, DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~, 2018 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
*2)  経済産業省, D X レポート2 中間取りまとめ(概要),2020
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf