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DXの日米の取り組み比較(IPA DX白書2023より)その2

COLUMN2023.06.09

前回は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX白書2023」1)から、日米におけるDXの取り組みでいかに差があるかを紹介します。今回は、その差をさらに見ていきたいと思います。

図1は、DXの取り組みで「成果が出ている」と回答した日米の企業の取り組み内容と成果の比較です。「データのデジタル化」で十分な成果が出ているとした企業は、日本の16.5%に対し米国では3倍の46.3%に達しています。「データのデジタル化」と「業務の生産性向上」では、「十分成果が出ている」と「ある程度出ている」を合わせると、日米ともに8割前後の企業で達成しています。

一方、「新規製品・サービスの創出」、「ビジネスモデルの根本的な変革」では、「十分成果が出ている」と「ある程度出ている」を合わせると、日本では24.8%、21.8%に対し、米国では66.8%、71.3%にまで達し、DX本来の目的が米国では十分達成されていることが伺えます。

※集計対象は、DX取組の成果において「成果が出ている」と回答した企業
図1 DXの取組内容と成果(IPA 「DX白書2023」より)

 

経営の観点からITに見識がある役員の割合の比較(図2)で見ると、日本では役員の3割以上に達するのは2022年度で27.8%(=17.2+10.6)に対し、米国では60.9%(=38.9+22.0)にまで達しています。経営層の関わりは米国に比べ日本が低いことが分かります。

図2 ITに見識がある役員の割合(IPA 「DX白書2023」より)

 

さらに、図3の経営者・IT部門・業務部門が協調でも、「十分にできている」、「まあまあできている」を合わせると米国では80.1%に対し、日本では37.1%、「十分にできている」では5.9%に過ぎないのが現状です。本来、DXは部署単位の課題ではなく全社課題として取り組むべきテーマであるにも関わらず、経営者・IT部門・業務部門の協調が低いことが、DX推進による成果が出ている企業が日本では少ないことに繋がっていると思われます。

図3 経営者・IT部門・業務部門が協調(IPA 「DX白書2023」より)

 

DXを推進する人材の育成・評価ではどうでしょうか?

DXを推進する人材像の「設定・周知を社内で実施している」企業は、米国では48%に対し、日本では半分以下の18%に留まっています。日本では40%の企業で、DXを推進する人材像を「設定していない」のが現状です。(図4)

図4  DXを推進する人材像の設定・周知(IPA 「DX白書2023」より)

 

DXを推進する人材の育成方法で、「DX案件を通じたOJTプログラム」、「DX推進リーダー研修」の項目では、「会社として実施している」のが日本企業で23.9%、17.4% に対し、米国では60.1%、35.2%にと2倍以上の差がでています。他の項目でもほぼ同じ傾向になっています。米国の企業は、会社としてDX推進人材を育成することに積極的であることが伺えます。

図5 DXを推進する人材の育成方法(IPA 「DX白書2023」より)

 

現在のDX推進のための企業文化・風土の状況(図6)では、「社内の風通しがよく、情報共有がうまくいっている」企業は、米国では66.8%に対し、日本では17.3%で米国の1/3以下に留まっています。「リスクを取り、チャレンジすることが尊敬される」は、米国42.5%、日本15%、「高いスキルが報酬に反映」は米国41.2%、日本10.9%、「最先端の仕事ができる」は米国40.2%、日本11.2%と軒並みに大きな差があらわれています。

図6 DX推進のための企業文化・風土の状況(現在)(IPA 「DX白書2023」より)

 

日米のDX取り組み比較をDX白書から2回に渡って見てきましたが、DXの本来の意味であるその企業におけるビジネスモデルの変革、経営戦略として経営層が位置付けて見ているかで、全社規模でテーマを決め、人材の育成・評価を含め推進しているか、その結果として満足のいく成果が結果として出ているか、日米で大きな差として現れているように思われます。
日本の製造業では、今までその企業固有の製品開発・製造には社内の優秀な人材を投入して競争を勝ち抜いてきましたが、これからは、DXを自らの企業戦略のなかで位置づけ優秀な人材を社外から採用することだけにこだわることなく、社内で見つけ育てることを考えていく必要があるのではないでしょうか?

<参考文献>
1)  IPA、「DX白書2023」