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職場でのコミュニケーションを良くするには?

COLUMN2022.09.21

上司―部下の関係、先輩―後輩の関係、顧客との関係、それぞれにおけるコミュニケーションをどのよいに取れば良いのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか? 

ここで、フロイト、ユングと並び称されるアドラー心理学における対人関係の捉え方を紹介したいと思います。アドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」としています。対人関係の問題とは、その人とどの様な距離感で話をすれば良いのか、その人が私の考えや意図を理解してくれるのか、その逆に、相手の考えをどの程度正しくこちらが理解できるのか、そこにおける摩擦や抵抗、あるいは信頼の問題として現れることだと思います。 

相手と良好なコミュニケーションが取れれば、親しみや信頼が生まれますが、良好でないコミュニケーションの場合、信頼関係も生まれず、悪い場合は、自分を利用する、あるいは邪魔をする存在と捉えることがあります。この対人関係での親しみや信頼関係が良ければ、さらに密なコミュニケーション関係を築き、逆に信頼関係が築けない場合はコミュニケーションが疎遠になると言う悪循環も生み出します。 

良くないコミュニケーション関係に陥るのは何故か? もし、他者との人間関係やコミュニケーションをとる時に問題を感じている方は、アドラーが対人関係を考えるうえで指摘した次の2つのことについて考えてみてください。 

ひとつは、「自分が世界の中心にいる」という意識です。これは幼児に甘やかされてそのような意識が作られたとしています。ここまで、露骨に意識している人は少ないと思いますが、少なからず、相手が「何をしてくれるのか」そのことばかりに気を取られて、自分の努力や行為を顧みることをおざなりしていることは無いでしょうか? もう一つは「承認要求」、常に他者から認められ誉められることを求めていることはありませんか? 

「自己中心的」や「承認要求」の意識から脱却するにはどうすれば良いか? アドラーは三つの方法を紹介しています。 

一つは、他者に関心を持つことです。自分にしか関心のない人は他者への関心や、相手がどの様に感じているかに思いを馳せることはありません。よく言われる、相手の立場にたって考える、そのためには想像力を磨き発揮させることが必要です。 

二つ目は、他者は自分の期待を満たすためにいるのではないことを知ることです。その逆で、自分も他者の期待を満たすためにいるのではありません。承認要求は他者に認められたいと思うことで、承認する他者に依存した生き方になるのです。 

三つ目は、「課題の分離」です。ある事柄の最終結末は誰に降りかかるのか、誰が最後に責任を引き受けるのかを考えればその課題が誰のものかが分かります。対人関係のトラブルは、この課題を取り違えて人の課題に土足で踏み込むこと、踏み込まれることで起きることです。 

自分の課題か、相手の課題かそれを取り違え無いようにすることが大事ですが、「他者と協力しなければ越えられない課題もある」ことを知っておく必要があります。具体的には、会社の上司と部下の関係、顧客と自分の会社の関係、教師と生徒の関係です。部下の担当業務であっても、その仕事がこなせない場合は上司が指導しフォローすることが必要です。その仕事ができなければ部下の課題であっても、それは上司の課題でもあるのです。この協力関係を築くときに、その範囲をお互いに確認しておくことが重要です。 

 <参考文献>
*1) 岸見一郎、100分de名著 人生の意味の心理学 アドラー, 2016, NHK出版