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マネージャーの大切な仕事とは

COLUMN2021.08.30

 人を管理するマネージャーの仕事に関する本は、山のように出版されていますが、今日は『インナーワークライフ』*1)という考え方に元づき、マネージャーの仕事で最も大切なことは何かを紹介します。 

 インナーワークライフとは、「人間の認識感情モチベーション、この三つの要素が互いに影響し合い、その人の主観的な体験を形作る」こととしています。各個人のインナーワークライフ・システムに対して、日々の職場での出来事がインプットされ、その結果として各人の仕事のパフォーマンスがアウトプットされる様子を以下に示します。 

  1. 職場での出来事に対する状況認識は、職場での出来事に対するポジティブあるいはネガティブな感情を増幅させます。 
  2. ネガティブな感情は苛立ちや不安を増幅させ、幸福感は出来事の解釈はよりポジティブな方向に向かわせます。この感情の反応が、仕事に対すモチベーションを急上昇させたり急降下させたりします。

 モチベーションには外発的動機付け(昇進や待遇向上への意欲、厳しいノルマ管理など)と内発的動機付け(仕事への深い没入感、面白く、楽しく、熱中できるなど)があります。ここで、多くの人のキャリアの初期には、仕事に対する強い内発的モチベーション(動機付け)が存在し、何かに妨害されるまでは存在し続けると考えられています。 

 仕事がやりがいのあるものである限り、マネージャーは社員のモチベーションを高めることに時間を割くより、彼らの仕事の進捗を阻む障害を取り除き、仕事の達成感を実感できる手助けをする方が、遥かに優れた仕事をしてくれることを、この本ではフィールドワーク(企業の個々のメンバーへの実態調査)で明らかにしています。 

 ここで、現在の仕事にやりがいをあまり感じていない場合は、まずはその社員がなぜそう感じていないかの原因を探ることが必要です。また、仕事の進捗をマネジメントするうえで大切なことは、職場でのチームの心理的安全性がどこまで確保されているかということです。これが確保されていなければ、仕事の状況認識が正しく行われず、ネガティブ感情によるモチベーション低下を招きかねないことに留意する必要があります。 

 

<引用文献>
*1)  テレサ・アマビール  (著), スティーブン・クレイマー (著), 中竹竜二 (監修),「マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力」, 2017, 英治出版