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システム開発のスタートは要件定義?

COLUMN2021.03.11

一般にシステム開発は、『要件定義 ― 設計 ― 開発(プログラミング)― テスト』の工程順序で行われます。では、要件定義がシステム開発の最初の工程でしょうか?

答えは否です。IPA共通フレーム2013では、要件定義の前にシステム化構想・システム化計画の企画プロセスを定義しています。この企画プロセスでは以下のことを実施します。*1)

①経営課題を解決するための新たな業務課題とシステムの構成を立案する。
②①を具現化するためシステム化計画およびプロジェクト計画を具体化し、利害関係者の合意を得る。

そして、要件定義の開始に際して、このシステム企画で構想された以下の内容を確認することが重要となります。*2)
① システム化の背景・目的
② 現行業務・システムの解決すべき課題や達成すべき課題
③ 問題解決・課題達成のための業務・システムの改善内容や進め方のポイント
④ 方策となる新しい業務の仕組みやシステム化内容の立案とそれらの期待効果
⑤ プロジェクト計画(作業タスク、推進体制、スケジュール、費用、人的リソースなど)

通常、システム企画はユーザ企業で実施され、要件定義から外部のシステムベンダーに発注される場合が多く、この時に、システム企画(プロセス)で検討されるべきことが充分吟味され、利害関係者(ステークフォルダ)の合意がどこまで取れているかで、その後のシステム開発プロジェクトが成功するかを決める鍵となります。
ここで、システム企画の段階で上記内容が充分に詰められず、また、利害関係者の合意が不十分な状態で要件定義に臨むと、その後のシステム開発でスコープの拡大や要求事項の変更・追加が発生し、当初予定したプロジェクト計画通り進まなくなり開発遅延、コストオーバを引き起こすことになりかねません。最悪の場合は、開発したシステムで新しい業務に対する期待効果が得られない状態となります。

要件定義の開始(システムベンダーにとってはシステム開発案件の受注タイミング)時には、発注側のユーザ企業、受注側のシステムベンダー双方で、上記システム企画で構想された内容を共通認識としてシステム開発プロジェクトを進めて行きたいものです。


<参考文献>
*1) IPA/SEC,「共通フレーム2013~経営者、業務部門とともに取組む「使える」システムの実現~」, 2013
*2) IPA/IKC,「ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ」, 2019

https://www.ipa.go.jp/files/000079352.pdf