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ものづくり企業において重要なことpart.1「ポジショニング戦略と組織能力」

COLUMN2022.07.21

今回のコラムでは、深層の競争力と表層の競争力をより深く理解するために、競争戦略を検討する際に一つの基本となる考え方であるポジショニング(SP:Strategic Positioning)の戦略論と組織能力(OC:Organizational Capability)の戦略論について説明します。


1.ポジショニングの戦略と組織能力の戦略

まず、ポジショニングの戦略とは一言でいうと「他社と違うところに自社を位置づける」ということです。これは、企業外部のポジションに軸足を置いており、まだ他社が進出していない分野や市場、戦略を取ることです。例えば、自動車産業で言えば、BMWは品質を重視していますが、それに対しヒュンダイは低コストを重視しており、両社とも高品質や低コストにポジショニングを置いて、他社との競争を避けているといった点が挙げられます。従って、ポジショニング戦略とは言い換えれば、競争を避けるための戦略であることが分かります。

次に、組織能力の戦略とは一言で言うと「他社より抜きんでる」ということです。これは、企業内部の経営資源に軸足を置いており、自社内で改善を重ね他社よりもある分野で抜きんでることによって競争優位を獲得しようとするものです。例えば、トヨタはトヨタ生産方式や原価企画などによって他社よりもQCDFの面で抜きんでています。従って、組織能力の戦略とは言い換えれば、同じ土俵で競争をして勝ち切るための戦略であることが分かります。

また、それぞれの特性としてポジショニングの戦略は、マネジメントが意思決定さえすればすぐに実行できますが模倣されやすくなっています。それに対して組織能力の戦略は、じっくりと時間をかけて独自の組織ルーティンとして築いていくことが必要なため、意思決定してもすぐには効力を発揮しませんが、一度築きあげれば模倣されにくいといった特徴を持っています。

 

2.各戦略に立脚した表層の競争力と深層の競争力

ポジショニングと組織能力は上記のように分類することができますが、この違いは欧米企業と日本企業の戦略思想の違いにも反映されています。

具体的には、欧米企業は技術をオープンにしてISOに代表されるように規格化や標準化を推し進め、市場をおさえることによって競争を避けています。従って、ポジショニングの戦略を重視していることが表れています。

一方で日本企業は、クローズドで企業内(もしくは系列間)による擦り合わせや、小集団による絶え間ない改善活動によって組織の能力を高めることによって競争優位を確立してきました。従って、組織能力の戦略を重視していることが分かります。

また、これを言い換えると、欧米企業が得意としている表層の競争力は、ポジショニングの戦略が主に反映された競争力、日本企業が得意としている深層の競争力は、組織能力の戦略が主に反映された競争力であるということが推測できます。

<参考文献>
J.B. バーニー(著)・岡田 正大 (翻訳) (2003)   『企業戦略論【上】-基本編 競争優位の構築と持続-』 ダイヤモンド社
M.E.ポーター (著)・土岐 坤 (翻訳) (1985)   『競争優位の戦略-いかに高業績を持続させるか-』 ダイヤモンド社