ITシステム構築におけるユーザーの支援、プロジェクトにおけるメンバーの支援、上司や先輩からの担当者への支援など、私たちはいろいろな場面で協力関係をつくる場面に遭遇します。今回は、組織文化や組織開発の分野で著名な エドガー・H・シャインの著書「人を助けることはどういうことか」*1)から“本当の協力関係をつくる7つの原則”を紹介します。
原則1 与える側も受け入れる側も用意できているとき、効果的な支援ができる。
支援される側が支援を必要と考えていない場合、往々にして余計なお世話となり適切な支援とならないことに注意してください。相手が今何を求めているか観察し問いかけることが大切です。『馬を水辺につれていけても水を飲ませることはできない』のです。
原則2 支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる。
クライアント(支援の対象者)がどのような支援を求めているのか、率直に尋ねてみることが必要です。支援する側が相手を助けているとの思いに気を取れて、過剰な支援になっていないか時々確認する必要があります。
原則3 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。
何が必要か判断するために、クライアントにも参加してもらい調査し、必要な情報をすべて打ち明けてもらうような信頼関係を作って、はじめて効果的な支援が行えます。
原則4 あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である。
支援するのであれば、どのような支援をするつもりなのかに基づいて、クライアントにどのようにコミュニケートする必要があるか考える必要があります。クライアントへの励ましや、修正を必要とする指摘は最小限に留めておくことです。
原則5 効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる。
求められた支援が、手慣れたものであっても、過去の経験や偏見、推測をできるだけ押しとどめて、クライアントに問いかける必要があります。それは、支援者が正しい情報を最大限得るためです。
原則6 問題を抱えている当事者はクライアントである。
支援者がどれほどクライアントの問題の解決策を持っていても、その問題はクライアントのものであり解決方法を決めるのもクライアントです。評価し行動するのはクライアント自身であることをあることを認識する必要があります。
原則7 すべての答えを得ることはできない。
これまでの経験があればあるほど、すべて答えを出せるとの思い込みや、役に立たない支援をしてしまいがちです。ときには、「問題を分かち合う」ことが正しい選択となる場合があります。それによりクライアントが自分の問題であると認識し、次の一歩を踏み出すことができるのです。
エドガー・H・シャインが伝えようとしていることは、支援はそれを受ける側が決めること、すなわち、どのような支援を受けるあるいは受けないかは、クライアント側の自己決定権に委ねると言うことではないでしょうか。他者と協力関係を築く際に、自分の行動をこの視点で見直してみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
*1) エドガー・H・シャイン (著), 金井 真弓 (訳), 金井 壽宏(監訳)「人を助けるとはどういうことか―本当の「協力関係」をつくる7つの原則」, 2009, 英治出版