最近、職場でのコミュニケーションを改善するために、上司と部下による一対一のミーティングである「1on1」が行われるケースが増えていますが、「1on1」にはどのようなコミュニケーション・タイプがあるのでしょうか?
まずは、一人の人間には複数の側面があるとする、「ジョハリの窓」について説明します。
図1の枠1と3は自分自身のうち他人に見せている側面、枠1と2は自分自身のうち自分が知っている側面です。枠4は自分も他人も知らない側面、無意識の自分、潜在意識となる側面です。
これらの側面に対して、エドガー・H・シャインは4つの種類(レベル)のコミュニケーション*1) があるとしています。
① 開かれたコミュニケーション(矢印A)
ほとんどのコミュニケーションはこのレベルで、2つの開かれた自己の間で起こり、一般的なコミュニケーション・プロセスの分析もこの範囲に留まります。
② 無意識のコミュニケーション(矢印B)
その人には見えない自己から私たち(相手)が引き出した信号または意図で、その人は発信していることに気づいていないコミュニケーションです。
③ 打ち明ける、正直に話す(矢印C)
私たちが通常は隠していることを意図的に暴露する時に起こり、誰かに 『打ち明ける』 または 『正直に話す』 ことと考えています。
④ 感情の伝播(矢印D)
ある人がもう一方の感情に影響を与えながら、そのどちらにもその感情の出所をはっきりと気づいていない場合などです。
送り手が緊張していることを否定しているにもかかわらず、受け手を同じ様に緊張させてしまう時のように、受取手に中に喚起された感情は送り手の感情を写していることがあります。
最初は、開かれたコミュニケーションで進められる「1on1」でも、言葉によらないコミュニケーション(態度、しぐさ、声の調子など)や、アクティブリスニングを交えることにより、相手の警戒心を解き、②の無意識のコミュニケーション、③の打ち明ける、正直に話す、そして④の良い感情の伝播でコミュニケーションが進められることになると考えられます。
エドガー・シャインのこのコミュニケーション・タイプを念頭に置くことは、個々のテクニックや聞き手の姿勢・態度などの実践手法を理解するうえで、有益であると思います。参考にして頂ければ幸いです。
<参考文献>
*1) エドガー・H・シャイン (著), 稲葉 元吉 (翻訳), 「プロセス・コンサルテーション―援助関係を築くこと」, 2012, 白桃書房