INFORMATION

インダストリー4.0とモノづくりの見える化について

COLUMN2022.11.02

ドイツで提唱されたインダストリー4.0とは何か? これについての解説記事はWebや書籍でいくつも取り上げられていますが、ここでは、モノづくりの見える化の視点からとらえてみたいと思います。

インダストリー4.0は、ドイツ政府が主導し、産官学共同で進めている国家プロジェクトで、「第4次産業革命」と位置付けられ、そのコンセプトは「スマートファクトリー」(考える工場)と言われています。(図1参照)

図1 インダストリー4.0とは (出典:産官学連携ジャーナル2014年10月号)

モノづくりの世界でよく言われる「見える化」も1.0から4.0としてとらえると以下のようになるようです。*1)

  • 見える化1.0 → 「原価の見える化」で、原価がいくらで粗利がいくらかお金の流れを可視化することが目的
  • 見える化2.0 → 「プロセスの見える化」で、モノづくりのプロセス全体を一気通貫に見える化し重複や無駄を省く
  • 見える化3.0 → 「稼ぐポイントの見える化」で、モノを売るだけでなくサービスをモデル化し収益構造を根本から見直す
  • 見える化4.0 → 「リアルタイムの見える化」で、IoT化で各種データをリアルタイムでモニターし、バリューチェーンのさまざまな場面でいままでできなかったことが可能となる

インダストリー4.0は、モノづくり企業にとってはこの見える化1.0から4.0へステップアップすることとして捉えることができるのではないでしょうか?

「原価の見える化」とは、儲けの構造を把握することで、どこで儲かって(収益・付加価値)どこで儲からないか(原価がかかるか)をデータ取集して分析することです。この作業は地道な作業が必要なため、経営トップが経営課題としてとらえない限り頓挫するケースが多いようです。

「プロセスの見える化」とは、バリューチェーンの上流部分である製品・企画、設計・開発から製造部門のフローを見える化することで、ここでも個々の部門の最適化ではなく全体最適の視点でプロセスの見える化を進めることです。

「稼ぐポイントの見える化」としては、GEの航空機エンジンの例が有名ですが、販売した航空機エンジンには各種センサーが取り付けられ、稼働時間・摩耗・振動などのデータがGE側に集積され次の製品開発に役立てられるだけでなく、どういう運行方法をとったときに一番燃費が良くなるかを解析し、その制御ソフトもセットで販売した事例があげられます。これはIoTを活用して稼ぐポイントを見える化した例です。

「リアルタイムの見える化」では、さらに、「ビッグデータ分析と予見」、「リアルタイムの制御自動化」が続くとのことです。この例として、コマツはダンプカーやショベルカーを売るのではなく、山一つ削って、いくらという鉱山の運営委託までサービスモデルを拡大したことがあげられます。

インダストリー4.0をツールとしてIoTやAIの活用ということだけでなく、いままでできなかったことが出来、それがどのようなビジネスになるかの視点を持つことが大事ではないでしょうか。

 <参考文献>
*1)  木村 尚敬・沼田 俊介、「見える化4.0 AI×IoTで「稼ぐ力」を取り戻せ!」, 2018, 日本経済新聞出版